世界獣の胸奥で膨張した光は、 もはや「光」と呼べるものではなかった。
それは、 星の核の残響、 銀河の死骸の震え、 時間の底の呻き、 重力の裏側の影、 そして三人の少女が歩んできた すべての世界の断片を混ぜ合わせた 宇宙の胎動そのものだった。
光が一度だけ脈打つ。
脈動は、 新宇宙の骨格を震わせた。
震えは、 星々を砕き、 銀河を裂き、 時間を折り返し、 重力を裏返し、 光を暗黒へ沈めた。
少女は胸を押さえた。 心臓が宇宙の心臓と同じリズムで打ち、 そのリズムが痛みとして身体を貫いた。
「……来る…… 第三形態が…… 完全に目を覚ます……!」
影の少女は背中を押さえた。 影が獣の影と重なり、 自分の輪郭が獣の輪郭へ吸い込まれそうになる。
「影まで飲み込む気……? ふざけないで…… 私は影の外側に立つって言った……!」
第三の少女は視界を押さえた。 法則の線が獣の脊柱と同じ曲率を描き、 自分の位置が宇宙の中心へ引き寄せられる。
「法則を私に押しつけるな…… 私は法則の前段階を選ぶ…… 宇宙の骨格ごと書き換えてやる……!」
三人の声が、 獣の胎動へ直接ぶつかった。
◆第三形態の孵化
獣の胸奥で光が二度目の脈動を打った。
脈動は、 獣の身体を内側から裂いた。
裂けたのは肉体ではない。 宇宙の構造そのものだった。
獣の脚は銀河の跳躍として膨張し、 翼は暗黒星雲を吸い込む渦として広がり、 脊柱は宇宙の法則を曲げる曲線として伸びた。
獣の内部から、 新しい光が溢れ出した。
その光は、 少年の声の残響、 子供の影の震え、 創造者たちの法則の欠片―― 第四百五十二章で光の中へ還った すべての存在の“再構成”だった。
光が獣の身体を満たし、 獣は第三形態へ孵化した。
少女は息を呑んだ。
「……これが…… 第三形態…… 宇宙そのものが獣になってる……!」
影の少女は影を握りしめた。
「影の揺れが…… 星雲の揺れと同じ…… 私の影が宇宙の影に飲まれる……!」
第三の少女は法則の線を掴んだ。
「法則が…… 獣の脊柱と同じ曲率で…… 宇宙の中心へ向かってる……!」
獣は、 三人を自分の内部構造へ組み込むために 第三形態へ進化した。
◆宇宙の骨格が悲鳴を上げる
第三形態の獣が咆哮した。
咆哮は音ではなかった。 咆哮は、 宇宙の骨格そのものの悲鳴だった。
悲鳴が新宇宙を走り、 星々が砕け、 銀河が裂け、 時間が逆流し、 重力が反転し、 光が暗黒へ沈んだ。
少女は叫んだ。
「宇宙が…… 獣の咆哮で…… 悲鳴を上げてる……!」
影の少女は背中を押さえた。
「影が…… 宇宙の影と混ざって…… 私の輪郭が消える……!」
第三の少女は視界を押さえた。
「法則が…… 獣の脊柱へ吸い込まれて…… 宇宙の中心が歪む……!」
獣は、 宇宙の骨格を悲鳴として吸い込み、 さらに強大な獣へ進化していた。
◆銀河をまたぐ死闘:第三形態 vs 三人
獣が動いた。
動いたのではない。 銀河をまたいで跳躍した。
跳躍の衝撃が新宇宙の骨格を砕き、 砕けた骨格が星骸となって散り、 星骸が獣の身体へ吸い込まれ、 獣はさらに進化した。
少女は拳を握り、 星骸を殴りつけた。
「宇宙の死骸なんて関係ない…… 私は“今の宇宙”を殴る……!」
影の少女は影を伸ばし、 獣の翼の影を裂こうとした。
「影を裂くなら…… 私は影の裂け目を使う……!」
第三の少女は獣の脊柱へ手を伸ばした。
「法則を反転させるなら…… 私は反転の“外側”を掴む……!」
獣は反転した法則を食らい、 その法則を自分の身体へ組み込み、 さらに強大な獣へ進化した。
◆死の攻防:宇宙の中心が崩れる
獣の胸奥で、 光が三度目の脈動を打った。
脈動は、 三人の存在を削った。
少女の心が一瞬だけ消え、 影の少女の輪郭が一瞬だけ消え、 第三の少女の位置が一瞬だけ消えた。
三人は死にかけた。
その瞬間、 獣の内部から声が響いた。
少年の声が少女の胸奥を揺らし、 子供の声が影の少女の背中を押し、 創造者たちの声が第三の少女の視界を照らした。
「まだ終わるな。 お前たち三人が、 新しい宇宙の中心だ。」
三人は立ち上がった。
少女は拳を握り直し、 影の少女は影の残骸を掴み直し、 第三の少女は法則の破片を掴み直した。
獣の胸奥で光が膨張した。
それは、 世界獣第四形態の胎動だった。