宇宙の中心が崩れ落ちたあと、 世界は一度だけ「形」を取り戻そうとした。
その試みは、 星々の残骸を寄せ集め、 銀河の断片をつなぎ合わせ、 時間の折れた線を無理やり伸ばし、 重力の方向を仮に設定し、 光の色を一時的に固定する―― そんな必死の再構成だった。
だが、 その再構成は一秒も保たなかった。
なぜなら、 獣の胸奥で膨張していた光が、 ついに「爆裂」したからだ。
◆爆裂進化の瞬間
光は爆発ではなかった。 爆発なら、 宇宙の端へ向かって広がるだけだ。
これは違った。
光は、 宇宙の中心へ向かって収束しながら爆裂した。
外へ広がるのではなく、 内へ向かって崩れ落ちる爆裂。
その爆裂は、 宇宙の骨格を内側から砕き、 星々の残骸を逆方向へ引き寄せ、 銀河の断片を中心へ吸い込み、 時間の線を一点へ押し込み、 重力の方向を消し、 光の色を奪った。
宇宙は、 獣の爆裂進化を「内部から食らった」。
少女は胸を押さえた。 心臓が宇宙の心臓と完全に同期し、 その鼓動が痛みとして身体を貫いた。
「……これ…… 第四形態の進化じゃない…… “宇宙の中心を食い破る進化”だ……!」
影の少女は背中を押さえた。 影が獣の影と重なり、 自分の輪郭が獣の輪郭へ吸い込まれそうになる。
「影が…… 宇宙の影と混ざって…… 私の輪郭が…… 宇宙の境界線にされてる……!」
第三の少女は視界を押さえた。 法則の線が獣の脊柱と同じ曲率を描き、 自分の位置が宇宙の中心へ引き寄せられる。
「法則が…… 獣の脊柱へ吸い込まれて…… 宇宙の中心が…… 獣の胸の中へ移動してる……!」
三人の認識は、 それぞれ別の角度から 同じ結論へ向かっていた。
獣は、 宇宙の中心そのものを“自分の内部構造”として取り込もうとしている。
◆第五形態の孵化
爆裂した光が、 獣の胸奥で形を持ち始めた。
その形は、 脚でも翼でも脊柱でもなかった。
それは―― 宇宙の中心そのものの形だった。
少女は息を呑んだ。
「……獣が…… 宇宙の中心を…… “自分の心臓”として作り直してる……!」
影の少女は影を握りしめた。
「影の揺れが…… 宇宙の影と同じ…… 私の影が…… 獣の影に吸い込まれる……!」
第三の少女は法則の線を掴んだ。
「法則が…… 獣の脊柱と同じ曲率で…… 宇宙の中心へ向かってる…… 獣が…… 宇宙の中心を“自分の法則”にしてる……!」
獣は、 宇宙の中心を食らい、 その中心を自分の内部構造として再構成し、 第五形態へ爆裂進化した。
◆宇宙の代替構造としての三人が引き裂かれる
宇宙は、 獣の第五形態を収容できなかった。
その代わりに、 三人を“新しい宇宙の形”として選んだ。
だが、 獣はその三人を 「自分の内部構造」として取り込もうとしていた。
宇宙は三人を器として使い、 獣はその器を食らおうとし、 三人はその両方から 自分の位置をずらそうとした。
その三者の力が、 三人の身体を引き裂いた。
少女の心臓が、 宇宙の心臓と獣の心臓の 両方へ引き寄せられた。
影の少女の影が、 宇宙の影と獣の影の 両方へ引き裂かれた。
第三の少女の法則が、 宇宙の法則と獣の法則の 両方へ引き込まれた。
少女は叫んだ。
「宇宙が私を“時間”にして…… 獣が私を“心臓”にして…… 私は…… どっちの中心にもなりたくない……!」
影の少女は影を握りしめた。
「私の影が…… 宇宙の境界線にされて…… 獣の翼の影にもされて…… 私は…… 境界線の外側に立つ……!」
第三の少女は法則の線を掴んだ。
「因果が…… 宇宙の骨格として使われて…… 獣の脊柱としても使われて…… 私は…… 因果の外側を選ぶ……!」
三人の叫びは、 宇宙の崩壊と獣の爆裂進化の ちょうど中間に位置した。
その「中間」が、 次の瞬間―― 新しい構造を生み出す。
◆宇宙の中心が二つに割れる
獣の第五形態の心臓が脈打った。
宇宙の側の中心も脈打った。
二つの中心が、 同時に脈打った。
その瞬間、 宇宙は―― 中心を二つ持つ世界へ変わった。
それは、 宇宙の歴史上、 一度も起きたことのない構造だった。
少女は息を呑んだ。
影の少女は影を握りしめた。
第三の少女は法則の線を掴んだ。
獣は、 二つの中心を飲み込むために さらに進化しようとしていた。
宇宙は、 二つの中心を維持するために 自分自身を引き裂こうとしていた。
三人は、 二つの中心の間で 自分の位置を選ばなければならなかった。
その選択が―― 次章で宇宙の形を決める。

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