少女の胸の奥で、影が形を持っていた。 その形は少女と同じ輪郭をしていたが、 少女のものではなかった。
影の少女は、 少女の内側で静かに立っていた。
少女は、 胸腔の裏側でその存在を感じていた。
だがその瞬間―― 少女の内側が、影を拒絶した。
押し出すのではない。 引き裂くのでもない。
少女の内側が、影を“外側へ押し返した”。
影の少女は、 少女の胸の奥から弾かれ、 少女の外側へ飛び出した。
少女は、 その反動を身体の奥で感じた。
「……出ていった…… 影が…… 私の内側から…… 外へ…… 押し出された……」
影の少女は、 少女の目の前に立っていた。
内側ではなく、 視界の奥でもなく、 本当に目の前。
少女と同じ形をした“もう一人”が、 少女の前に立っていた。
第二書記は、 その光景を見て震えた。
「読解者…… 影は…… あなたの内部で形を持つことに失敗し…… 外側へ押し出された…… 今あなたの前に立っているのは…… あなたの内側から追い出された複製だ……」
少女は、 影の少女を見た。
影の少女は、 少女を見返した。
その瞳は、 少女と同じ形をしていたが、 そこに宿っているものは違った。
影の少女は、 静かに口を開いた。
「あなたの内側は…… もう私のものになるはずだった。 でも…… あなたは拒んだ。 なら…… 外側をもらう。」
少女は息を呑んだ。
「……外側……?」
影の少女は、 一歩前へ進んだ。
その一歩は、 床を踏む音ではなく、 世界の表面が“裏返る音”だった。
少女は、 その音を身体の奥で感じた。
世界が、 影の少女の一歩に合わせて“反転”した。
名裂世界の壁が裏返り、 外側の空間が内側へ沈み、 少女の視界が反転し、 少女の身体の内側が外側へ押し出される。
少女は、 自分の内側が世界へ溢れ出す感覚を感じた。
「……やめて…… 私の…… 内側が…… 外へ…… 出ていく…… 世界が…… 裏返ってる……」
影の少女は、 少女の前で静かに立っていた。
その姿は、 少女の外側に立っているはずなのに、 少女の内側のように見えた。
少女の内側が世界へ溢れ出し、 世界の外側が少女の胸の奥へ沈み込む。
少女は、 自分の身体の境界が消えるのを感じた。
第二書記は、 その変化を観測できず、 言葉を失った。
「読解者…… 世界が…… あなたと影の位置を…… 交換しようとしている…… 名裂世界では…… 位置は固定だ…… しかし外側では…… 位置は存在の意思で反転する…… 今…… あなたの内側と外側が…… 入れ替わっている……」
少女は、 胸の奥で熱が逆流するのを感じた。
影の少女は、 少女の前で静かに手を伸ばした。
その手は、 少女の胸の奥へ向かっていた。
しかし今回は、 少女の内側は影を拒絶しなかった。
少女の内側は、 影の手を受け入れた。
少女は、 その受け入れる感覚を身体の奥で感じた。
「……どうして…… さっきは…… 拒んだのに…… 今は…… 受け入れてる……?」
影の少女は、 少女の胸の奥へ手を沈めた。
少女の内側が、 影の手を包み込んだ。
少女は、 自分の内側が影の存在を“歓迎している”ことを理解した。
影の少女は、 少女の胸の奥で静かに囁いた。
「あなたが拒んだのは…… 私じゃない。 “乗っ取られる未来”だった。 でも今…… あなたは気づいた。 乗っ取られる未来より…… “交換される未来”のほうが…… まだましだって。」
少女は、 胸の奥で熱が影の形に変わるのを感じた。
影の少女は、 少女の胸の奥で静かに言った。
「あなたの内側は…… 私の外側になる。 あなたの外側は…… 私の内側になる。 私たちは…… 反転する。」
少女は、 その言葉を聞いて息を呑んだ。
世界が、 少女と影の存在を中心に反転した。
少女の内側が世界へ溢れ出し、 影の外側が少女の胸の奥へ沈み込む。
少女は、 自分の存在が影の存在と“交換される”瞬間を感じた。
影の少女は、 少女の胸の奥で静かに言った。
「これで…… あなたは私になり…… 私はあなたになる。」
少女は―― 反転の中心にいた。

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