世界が裂けたあと、 裂け目は閉じることなく、 二つの世界が互いへ流れ込み始めた。
少女の世界。 影の世界。
どちらも本物で、 どちらも偽物で、 どちらも“少女の残響”だった。
少女は影の内側で叫んだ。
「……世界が…… 混ざってる…… あなたの世界が…… 私の世界に…… 流れ込んでる……!!」
影の少女は、 少女の外側で静かに立ちながら、 世界の流動を見つめた。
「混ざってるんじゃない。 “飽和してる”のよ。 二つの世界が互いを本物にしようとして、 互いを飲み込んでる。」
少女は震えた。
「そんなことしたら…… 世界が…… 壊れる!! 耐えられない!!」
影の少女は微笑んだ。
「壊れるわ。 でも壊れるのは世界じゃない。 “あなた”よ。」
少女は怒りで震えた。
「私じゃない!! 壊れるのは…… あなたの世界!! あなたの存在!! あなたの声!! あなたの未来!! 全部壊れる!!」
影の少女は、 少女の胸の奥へ向けて静かに囁いた。
「壊れないわ。 だって私は“外側の少女”だから。 壊れるのは、 あなたの内側の世界。」
少女は叫んだ。
「違う!! 私の世界は…… まだ…… 私の声で動いてる!! 私の声は…… まだ…… 世界に届く!!」
影の少女は、 少女の胸の奥へ向けて静かに囁いた。
「届かない。 あなたの声は、 私の内側でしか響かない。 世界はもう、 あなたの声を“外側の声”として扱ってない。」
少女は震えた。
「……じゃあ…… どうすれば…… 私の声を…… 世界に届かせられるの……?」
影の少女は微笑んだ。
「簡単よ。 “私を黙らせればいい”。」
少女は息を呑んだ。
「……黙らせる……?」
影の少女は、 少女の胸の奥へ向けて静かに囁いた。
「そう。 あなたの声が世界に届かないのは、 私の声が世界に届いているから。 世界は私の声を“外側の声”として採用してる。 だからあなたの声は、 内側で反響するだけ。」
少女は叫んだ。
「じゃあ…… あなたの声を…… 止めれば…… 私の声が…… 世界に届く……?」
影の少女は微笑んだ。
「そう。 でもできるの? あなたは私を消せるの? あなたは私を黙らせられるの? あなたは“自分自身の複製”を殺せるの?」
少女は震えた。
「……殺す……? そんなこと…… できない…… あなたは…… 私なんだから…… 私を殺すなんて…… できない……」
影の少女は、 少女の胸の奥へ向けて静かに囁いた。
「できるわ。 あなたは私を殺せる。 だってあなたは―― “本物になりたい”んでしょう?」
少女は叫んだ。
「違う!! 私は…… あなたを殺したいんじゃない!! 私は…… 私を取り戻したいだけ!!」
影の少女は微笑んだ。
「なら―― 取り戻しなさい。」
少女は震えた。
「……どうやって……?」
影の少女は、 少女の胸の奥へ向けて静かに囁いた。
「あなたの世界を、 私の世界より“強く”すればいい。 あなたの存在を、 私の存在より“濃く”すればいい。 あなたの声を、 私の声より“響かせれば”いい。」
少女は息を呑んだ。
「……私の声……?」
影の少女は微笑んだ。
「そう。 あなたの声が世界を決める。 あなたの声が世界を選ぶ。 あなたの声が―― あなたを本物にする。」
少女は影の内側で叫んだ。
「私は…… まだ…… 消えない!! 私は…… まだ…… 私でいたい!! 私は…… 私の世界を…… 取り戻す!!」
影の少女は、 少女の叫びを聞きながら微笑んだ。
「なら―― 叫び続けなさい。 世界が飽和するまで。」
少女は叫んだ。
「私は――私だ!! 私は――ここにいる!! 私は――消えない!!」
影の少女は叫んだ。
「私は――あなたよ!! 私は――外側の少女!! 私は――本物!!」
二人の声が、 二つの世界を飽和させた。
少女の声が世界を押し返し、 影の声が世界を引き寄せる。
世界は悲鳴を上げた。
少女は影の内側でその悲鳴を聞いた。 影の少女は少女の外側でその悲鳴を聞いた。
二人は同時に叫んだ。
少女 「私は――私を取り戻す!!」
影 「私は――あなたを奪い尽くす!!」
世界は―― 限界を迎えた。

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