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14|同じ家で一人になる

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

同居二十三日目。美咲は夕食を三回温めた。

 理沙から最後に来たのは、

少し遅れます。

 だけだった。

 三時間以上、追加連絡はない。

 二十時五十八分、鍵が回る。

「ただいま」

「……おかえり」

「食事、まだですか」

「待ってた」

「先に食べていてよかったのに」

「そういう話じゃない」

 問題は連絡だった。終わる時刻が分からないなら、「分からない」と送れる。

「仕事中でした」

「一行も送れないくらい?」

「そういう言い方をされると」

「何」

「美咲さんだって、前にAUTH対応で夕食に来られなかったことが」

 空気が変わった。

「それ、今出す?」

「仕事で予定が崩れた点は同じです」

「私は連絡した」

 理沙が止まる。

「違う出来事だって、理沙さんが一番分かるでしょう」

 美咲の声が大きくなった。

 二人とも黙る。

「今、話すの無理です。少し一人にしてください」

 美咲は小さな個室へ入り、扉を閉めた。

 理沙は謝りに行きたかった。けれど、やめた。今すぐ謝りたいのは、美咲のためではなく、自分が楽になるためかもしれない。

 その夜は別々に眠った。

 それでも、

「おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 だけは言った。

 翌朝。

「おはようございます」

「おはようございます」

 朝食後、理沙が先に言う。

「十九時二十六分にMessageを見ました。返信できました。しませんでした」

 美咲は黙って聞く。

「それから、美咲さんの残業を自分の防御に使いました。条件の違う話です。ごめんなさい」

 美咲も言った。

「三回温めたって言ったの、説明だけじゃありません。罪悪感を持ってほしかった」

 少し間を置く。

「大きい声を出したのも、ごめんなさい」

 そこで全部は解決しなかった。

 美咲はまだ少し腹が立っていた。理沙も、何回連絡すれば十分なのかまでは分からなかった。

 二人は最低限だけ決めた。予定より大きく遅れると分かったとき、可能なら一報。終わる時刻が分からなければ、「分からない」と送る。

 それだけ。

 数日後、美咲は個室へ入った。

「本を読みます」

「はい」

「怒っていません」

「分かっています」

 一時間後、美咲が戻ってくる。

「おかえり」

「部屋から出ただけですよ」

「はい」

 美咲は少し笑った。

「ただいま」