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16|紹介する言葉

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

理沙は母親へ先に伝えた。

「澄架美咲さんは、私の恋人です。今、一緒に住んでいます」

 母親の返事は短かった。

「じゃあ今度連れてきなさい」

 日曜日、美咲は玄関の鏡を三度見た。

「緊張していますか」

「しています」

「母は試験をする人ではありません」

「そういう問題じゃないです」

「では?」

「理沙さんのお母さんだから」

 理沙は少し考えた。

「私も緊張しています」

「よかった」

 なぜそれでよいのか、理沙には完全には分からなかった。

 食卓では、仕事の話より料理と植物の話が多かった。

「理沙、水やりできてる?」

「できます」

「昔サボテン枯らしたでしょう」

「水量の判断ミスです」

「枯れたことは同じでしょう」

 美咲が笑った。

 食後、理沙が台所にいるあいだ、母親が言った。

「理沙が人のことをあんなに話すの、珍しいのよ」

「私のこと?」

「植物のこと、料理のこと、仕事で意見が合わないこと」

「最後のも話してるんですね」

「あとペンギン」

 美咲は額へ手を当てた。

 帰り道。

「私、少し怖かったです」

「何が」

「家族の前で、友達とか同僚とかに戻されるのが」

 理沙が足を止める。

「特別扱いされたいわけじゃない。でも、いないことにもされたくない」

 以前なら、美咲はそこまで言わなかった。

 理沙は答えを急がない。それから言った。

「美咲さんは、私の人生に、ものすごくいます」

「ものすごく」

「表現が」

「そのままでいいです」

 後で母親からMessageが届いた。

次は二人とも食べたいものを先に言って。

 理沙は返す。

また二人で行きます。

 美咲は「二人で」の三文字をしばらく見ていた。