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18|今日でなくても

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

理沙の誕生日。

「誕生日自体には強い感情はありません。一年の中の一日なので」

「私は祝いたいです」

「なぜ」

「理沙さんが生まれた日だから」

 理沙は黙った。

「その理由は理解できます」

「理解だけ?」

「嬉しいです」

「先にそっち言ってください」

 仕事後、美咲は最初のデートで行った植物園へ理沙を連れて行った。

 季節が違う。同じ温室でも、あの日とは光が違った。

「今日は予定表なし」

「ありません」

「本当に?」

「候補だけは」

「ありますね」

 ベンチで、美咲が包みを渡す。

 革のNotebook cover。

 理沙が普段使う私用Notebookにぴったりだった。

 内側。

まだ、閉じない。

「どういう意味ですか」

「訊くと思った」

 美咲はすぐ説明せず、隣の植物を見る。

「恋人になった。家も決めた。家族にも会った。そういう節目のたびに、何か完成したみたいに見えるでしょう」

「はい」

「でも、完成しなくていいと思っています」

 理沙が刻印を指でなぞる。

「今日まで一緒だったから明日も自動的に続く、ではなくて」

「明日も一緒にいたいから、明日も続く」

「そう」

「毎日確認は」

「しません」

「よかったです」

 翌日。

 二人とも牛乳を買って帰った。

「また」

 美咲が笑う。

「昨日、在庫確認を忘れました」

「私もです」

 理沙はNotebookを開く。

牛乳を二人とも買った。
美咲さんの方が七分遅かった。
今日も、一緒に夕飯を食べた。

「誕生日の次の日に書くこと、それ?」

「残したいので」

 美咲は理沙の肩へ顎を乗せ、Notebookを覗く。

「じゃあ、消さないでください」

「消しません」

 内側の刻印は、閉じたNotebookの中へ戻った。