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19|正しくなくても

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

午後のAUTH Review。

 綾音が止めた。

「澄架さん。この三件目、二件目の後続として扱っていますか」

「はい」

「参照時点が違います」

 澄架は画面を見直した。

 AUTH状態。取得順。参照元。

 自分が別時点の状態を継続証拠として読んでいたことに気づく。

「私の判断が違います」

 Reviewを止める。外部影響なし。修正。報告。

 仕事としては、それで処理できる。

 美咲の中では、それだけでは終わらなかった。

 帰宅後。

「理沙さん」

「はい」

「今日、私、間違えました」

「はい」

 理沙は否定しない。

 美咲はそこが少し怖い。

「私を見る目、変わりました?」

「変わった部分はあります」

 美咲の胸が縮む。

「今日の判断については、以前より注意して確認します」

「……はい」

「でも、それと美咲さんを信用できないことは別です」

「どうして」

「私は、美咲さんが絶対に間違えないから信用しているわけではありません」

 理沙は一覧にはせず、ゆっくり言った。

「隠さないこと。違うと分かったら認めること。根拠を直すこと。私が違えば止めること。その全部を、私は知っています」

「明日のReview」

「はい」

「手加減します?」

「しません」

 美咲はようやく笑った。

「よかった」

 翌日、綾音は関連箇所を昨日より厳しく確認した。

「澄架さん。ここ、まだ強すぎます」

「どこですか」

「継続可能性の根拠の一つは、昨日の修正で独立性を失っています」

「分かりました。書き直します」

 午後には、今度は澄架が綾音のTIME orderingを止めた。

「綾音さん、ここ逆です」

「確認します」

 数秒。

「逆です。修正します」

「お願いします」

 どちらも間違える。

 どちらも止める。

 夜。理沙はNotebookを開いた。

美咲さんが間違えた。
それでも、帰ってきた。
今日も、一緒に夕飯を食べた。

「最初の一行、消さないんですね」

「消したくありません」

「どうして」

「間違えた日も、美咲さんの日なので」

 美咲はしばらく三行を見る。

「じゃあ、そのままで」

 その夜の夕食は少し塩が強かった。

 美咲が一口食べて言う。

「適量を間違えました」

 二人で水を飲んだ。