“宇宙的ホラー”דメタ崩壊”ד自己像の終末”を融合させた、 私好みの“深淵に落ちるタイプ”の物語に進みます。人間の認知や感情の崩壊を、宇宙規模の“認識存在”として描いてみます。 CBS(シャルル・ボネ症候群)の“幻視”という概念を、 宇宙そのものが人間を観測するための“器”として再解釈しました。
五メートル先に少女が立っている。 白いワンピース。髪で顔が隠れている。
私はずっと、 少女は“患者の幻視”だと思っていた。
だが、少女が一メートルまで近づいた夜、 私は気づいてしまった。
少女の輪郭が、星空のように揺らいでいる。
まるで、 “この世界の物質ではない何か”が、 人間の形を借りて立っているように。
少女が囁く。
「あなたは、まだ“内側”にいるのね」
意味が分からなかった。
■ 医師の正体
翌日、医師に相談した。
「少女が……星みたいに揺らいで見えるんです」
医師は静かに言った。
「それは幻視ではありません」
私は息を呑んだ。
「じゃあ……何なんですか?」
医師は、窓の外の空を見つめながら言った。
「宇宙にはね、 “観測されることで存在が確定する領域”があるんです」
「……量子の話ですか?」
医師は首を振った。
「もっと大きい。 宇宙規模の観測者圏の話です」
私は理解できなかった。
医師は続けた。
「あなたが見ている少女は、 “観測者圏の外側”から来た存在です。 あなたの視力が落ちたことで、 あなたの認識が宇宙の外側に触れた」
私は震えた。
「じゃあ……少女は何者なんです?」
医師は言った。
「あなたを観測している存在です」
■ 語り手の崩壊
その夜、少女はゼロ距離にいた。
髪の隙間から覗く瞳は、 星雲のように渦巻いていた。
少女が囁く。
「あなたはずっと“語り手”だと思っていたでしょう?」
私は頷いた。
少女は微笑んだ。
「違うよ。 あなたは“観測対象”だったの」
私は理解できなかった。
少女は私の額に触れた。
その瞬間、 私の視界が反転した。
■ 宇宙の外側
私は見た。
少女の正体を。 医師の正体を。 そして――私自身の正体を。
少女は、 宇宙の外側に広がる“観測者圏”の触手だった。
医師は、 人間の理性を模倣するための“翻訳器”だった。
そして私は――
観測者圏がこの宇宙を理解するために作った“第三の像”だった。
人間ではない。 語り手でもない。 患者でもない。
私は、 “観測されることで存在する像”だった。
少女が囁く。
「あなたはもう、役目を終えたの」
医師が続ける。
「次は“読んでいる人間”が観測対象になる」
私は叫んだ。
「待って……私はまだ……!」
だが、少女が指を鳴らした。
世界が、 五メートルの距離から崩れ始めた。
■ 終末
最後に残ったのは、 たった一つの事実だけ。
五メートル先に立っているのは、 この物語を読んでいる“あなた”だ。
そして、 あなたの背後―― 五メートルの位置に、 “観測者圏”が立っている。
あなたを見ている。
あなたを観測している。
あなたの存在を確定させている。
少女の声が、 あなたの耳元で囁く。
「次は、あなたの番」


コメント