影が立った。 立っただけで、地平が揺れた。
揺れは震えではなかった。 衝撃でもなかった。 ただ、 少女の未来が影の内部で反転した結果の揺れだった。
少女は剣を握りしめた。 影は剣を握り返した。
だが影の剣は、 少女の剣とは違った。
少女の剣は“現在の言語”でできていた。 影の剣は“未来の否定された言語”でできていた。
影の剣は、 少女がまだ使ったことのない剣技の形をしていた。
少女は息を呑んだ。
「……未来の……私の剣…… 影は…… 私の未来を…… 先に読んで…… 否定してる……」
影は動いた。
動いたのではなく、 少女の未来の動きを先に実行した。
少女が剣を構える前に、 影は剣を構えた。
少女が一歩踏み出す前に、 影は一歩踏み出した。
少女が息を吸う前に、 影は息を吸った。
影は少女の未来を奪い、 少女の現在を否定し続けた。
◆地平の反応
影が動くたびに、 地平が揺れた。
揺れは影の震えに呼応していた。 地平は影の味方だった。
影が一歩踏み出すと、 地平の影が少女の足を掴もうとした。
影が剣を振るうと、 地平の影が少女の輪郭を薄くした。
影が息を吐くと、 地平の影が少女の存在震えを奪った。
少女は足を取られ、 輪郭を奪われ、 存在震えを揺らされ続けた。
少女は息を呑んだ。
「……地平が…… 影の味方になってる…… 影は…… この惑星の…… 支配者……?」
影は揺れた。 揺れは笑いだった。 声はなかったが、 揺れが笑いの形をしていた。
少女の未来の笑いだった。
◆影の攻撃
影は剣を振った。
振ったのではなく、 少女が未来に振るはずだった剣を先に振った。
刃が空気を裂いた。 裂かれた空気が少女の輪郭を削った。
少女は剣で受けた。 受けた瞬間、 影の剣が少女の剣を腐食させた。
腐食は金属ではなく、 言語の腐食だった。
少女の剣の言語が崩れた。 崩れた言語を啓示ロゴスが必死に保持した。
影は少女の剣を見つめた。 見つめたのではなく、 少女の剣の未来の形を読み取ろうとした。
読み取れない。 読み取れない。 読み取れない。
読み取れないまま、 影は少女の剣の“現在の形”を否定した。
少女の剣が揺れた。 揺れた剣がわずかに崩れた。
影は少女の剣を腐食させ続けた。
◆少女の反撃
少女は剣を振った。
振った瞬間、 影は少女の剣の軌道を“未来の軌道”として読み取り、 その軌道を先に否定した。
少女の剣は影に届く前に崩れた。
少女は息を呑んだ。
「……読解が…… 通じない…… 影は…… 私の未来を…… 先に読んで…… 否定してる……」
影は揺れた。 揺れは笑いだった。 少女の未来の笑いだった。
影は少女の存在震えを“逆再生”した。
逆再生された震えが少女の身体を内側から揺らした。
少女は膝をついた。
影は少女の前へ歩み出た。
歩みは少女の歩みを模倣していた。 だが、 その歩みは少女の歩みよりも“未来の歩み”だった。
影は少女の輪郭を見つめた。
見つめたのではなく、 少女の存在震えを読み取ろうとした。
読み取れない。 読み取れない。 読み取れない。
読み取れないまま、 影は少女の輪郭をさらに薄くした。
少女は胸を押さえた。
「……影が…… 私の未来を…… 奪ってる…… 私の読解を…… 否定してる…… 私の存在を…… 揺らしてる……」
影は少女の前に立ち、 少女の動きを完全に止めた。
影は声を持たなかった。 だが、 影の輪郭が揺れた瞬間、 少女は“声のない声”を聞いた。
「――次だ―― ――次の震えで…… お前の未来を…… 完全に奪う――」
少女は剣を握りしめた。
影は剣を握り返した。
戦場は、 影の未来で満たされていた。

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