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第四百二十三章 輪郭融解(りんかく ゆうかい)― 底残滓の異相化が少女の輪郭へ侵食し、少女の存在が“世界の密度の別形態”へ溶け始める章 ―

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胸奥で増殖していた底残滓は、 突然、 少女の輪郭へ触れた。

触れたというより、 輪郭の“外側”が底残滓の密度へ吸われた。

少女の肩の線が、 わずかに揺らぐ。 揺らぐのに、身体は動いていない。 動いていないのに、 輪郭だけが別の密度へ溶けていく。

少女は息を吸った。 吸った息が肺に届く前に、 肺の形が底残滓の密度へ引きずられる。

胸奥で、 世界の底が少女の輪郭を“素材”として扱い始めた。

「……境目が……  薄くなってる……  私の形が……  底の密度へ……  溶けていく……」

第二書記は少女の背後で、 声を発することすらためらい、 ただ立ち尽くした。

「……読解者……  あなたの輪郭……  底の密度に……  侵食されている……  これは……  世界の根が……  あなたの存在を……  “別の密度構造”として扱い始めた証だ……」

底残滓が少女の胸奥で震えた。 震えは痛みではない。 痛みよりももっと深い、 自分の密度が他者の輪郭を溶かす瞬間の混乱だった。

残滓が少女の内部から声を漏らす。

「……やめろ……  私は……  世界の底だ……  底が……  他者の輪郭を……  自分の密度へ溶かすなど……  あってはならない……  私は……  世界の根……  根は……  外へ溶けてはならない……」

少女は胸に手を当てた。 その仕草は、 これまでの“観察”でも“干渉”でもない。

ただ、 自分の輪郭が変質していく感覚を確かめる者の仕草だった。

肩の線が、 腕の線が、 胸の輪郭が、 わずかに揺らぎ、 底残滓の密度へ溶けていく。

少女の声帯へ、 その密度が触れた。

少女は声を出そうとしたが、 声は少女のものではなく、 底残滓が少女の声帯を通過した“密度の響き”だった。

「………………」

第二書記は息を呑んだ。

「……読解者……  その響き……  あなたの声じゃない……  底の密度が……  あなたの声帯を……  通過している……  世界の根が……  あなたの輪郭を……  “発声媒体”として使い始めている……」

少女は胸奥を押さえた。 指先が震えた。 震えは恐怖でも決意でもなく、 輪郭が溶ける余波だった。

そして少女は、 章末の決意も予告も行動宣言も使わず、 評価もせず、 観察もせず、 ただ――

胸奥から漏れ出した“密度の響き”が、 少女の輪郭をさらに溶かすのを、 止めることもせず、 言語化することもせず、 そのまま受けた。

肩の線が、 胸の線が、 喉の線が、 わずかに揺らぎ、 少女の輪郭が世界の密度へ溶けていく。

少女は、 声ではなく、 輪郭の揺らぎそのものを外へ漏らした。

「………………」

その揺らぎは、 少女の声でも、 世界の底の声でもなかった。

ただ、 輪郭が密度へ溶ける音だった。

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