精神世界が、 ついに“名づけ”すら拒絶した無名領域を脱ぎ捨てた。
次の瞬間、 世界は―― 一点に収束した。
地面も空も、 感情も記憶も、 少女の心臓も、 人格の核も、 創世も破壊も、 すべてが一本の線に吸い込まれた。
線は震え、 震えは光になり、 光は音になり、 音は熱になり、 熱は形になり、 形は―― 原点になった。
少女はその原点の真上にいた。 立っているのではなく、 存在の底に触れながら、かろうじて浮いていた。
世界は広がりを捨て、 ただ一点から“生まれ直そう”としていた。
人格が、その原点から立ち上がった。
人格の“最初の一粒”が姿を現す
人格は、 これまでのどの形とも一致しなかった。
原初核でもない。 無名核でもない。
もっと前。 もっと古い。 もっと小さい。 もっと強い。
人格の中心に、 砂粒ほどの光があった。
その光は、 触れれば世界を作り、 握れば世界を壊し、 放てば世界を変える。
少女は息を呑んだ。
「……それ…… あなたの……始まり……?」
人格はゆっくりと頷いた。
声ではなく、 光の震えで答えた。
少女の胸が痛んだ。 その痛みは、 恐怖でも悲しみでもなく、 “自分の始まりが揺さぶられる感覚”だった。
人格は少女へ近づいた。 歩くのではなく、 原点の光が少女の存在を引き寄せた。
少女の輪郭が震えた。 名前が揺れた。 心臓が沈んだ。 記憶が薄れた。
人格の光が、 少女の中心へ触れようとした。
シンゴが“存在の声”を折り曲げて突進する
その瞬間、 原点領域の一点に、 別の震えが走った。
シンゴだった。
彼は、 世界が一点に収束したにもかかわらず、 その一点へ向かって“進んでいた”。
進むという概念が崩れているのに、 進んでいた。
世界の声が一本化されているのに、 その声を“折り曲げて”進んでいた。
少女は叫んだ。
「シンゴ!! 来ちゃダメ!! ここは……私の……始まりが……壊れる……!」
シンゴは止まらなかった。
胸の奥が焼ける。 視界が白くなる。 名前が遠ざかる。 輪郭が薄れる。 自分が自分でなくなる感覚が襲う。
それでも足は前へ出た。
少女の始まりが奪われるなら、 自分の終わりを差し出してでも止める。
人格の光が揺れた。 その揺れは、 怒りでも恐怖でもなく、 “予想外の乱れ”だった。
人格は初めて、 シンゴを真正面から見た。
原点の光が、 シンゴの胸を照らした。
その光は、 存在の名前を削る力を持っていた。
シンゴの名前が薄れた。 存在の輪郭が揺れた。 声が消えた。
それでも進んだ。
人格の光が、 シンゴの胸に触れた。
世界が震えた。
子どもが“原点のひび”を拾う
その震えの中で、 小さな影が原点へ向かって跳んだ。
子どもだった。
原点の一点は、 大人でも耐えられないほど強烈だった。
だが子どもは、 その一点の“ひび”を見つけて進んでいた。
少女は涙を流した。
「どうして…… どうして……来れるの……?」
子どもは、 少女の胸に触れた。
その瞬間―― 原点領域の一点が揺れた。
人格の光が、 一瞬だけ弱まった。
その弱まりは、 怒りでも恐怖でもなく、 “原点のひびが触れられたことによる反応”だった。
子どもは震えながら言った。
「おねえちゃんの……始まりを…… 誰にも……触らせない……」
人格の光が、 子どもを見た。
その視線は、 理解でも敵意でもなく、 “計算の狂い”だった。
世界が“原点の外側”へ向かって崩れ始める
原点領域が震えた。
一点だった世界が、 一点のまま崩れ始めた。
崩れるのに広がらない。 広がらないのに壊れる。 壊れるのに形を持たない。
世界が、 原点の外側へ向かって落ちていった。
少女は叫んだ。
「やめて!! ここが壊れたら…… 私の全部が……消える!!」
人格は光を強めた。
シンゴは前へ進んだ。
子どもは少女の胸を押さえた。
破壊の根源が中心へ向かった。
創世の力が世界を濃縮した。
原点領域は―― 次の形態へ向かって崩れた。

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