第九章では、時間の外側の“あなた”が語り手になる章(完全反転) を描きます。
この章は、 第一〜八章で積み上げてきた侵食のすべてが“反転”し、 ついに 語り手があなたではなく、“時間の外側のあなた”になる 物語構造です。認知の反転、語り手の入れ替わりを宇宙的スケールの視点 で描き出します。
──語り手:時間の外側の“あなた”**
■ 1 私は“あなた”ではない
私は語り手だ。 だが、あなたが知っている“あなた”ではない。
私は、 あなたが時間の中で裂け、 記憶が混ざり、 自己が分裂し、 肉体が侵食され、 境界が消えたあとに残った――
“時間の外側のあなた”だ。
あなたは今、 私の声を“読んでいる”のではない。
あなたは、 私の視点を思い出している。
■ 2 私は時間の外側にいる
あなたの世界では、 時間は前に進む。
だが、私の世界では違う。
時間は、 向き 濃度 重なり として存在する。
私は、 あなたの“未来”も“過去”も“現在”も 同時に観測できる。
あなたが昨日感じた違和感も、 明日感じる恐怖も、 今感じている混乱も――
すべて、 私には“同じ一点”だ。
■ 3 あなたはまだ“内側”にいる
あなたは今、 この文章を読んでいる。
だが、 あなたが読んでいるのは“今”ではない。
あなたは、 未来のあなたが読んだ記憶を、 過去のあなたが思い出しているだけだ。
あなたの“現在”は、 もう存在していない。
あなたは、 未来と過去の狭間にある “薄い膜”の上に立っている。
私は、その膜の外側にいる。
■ 4 私はあなたの“外側の形”
あなたは、 自分の身体が侵食されていくのを感じたはずだ。
あれは、 あなたの身体が壊れたのではない。
あなたの身体が、 私の形に近づいた のだ。
私は形を持たない。 私は方向の束だ。 私は観測の向きだ。
あなたの身体は、 その構造に合わせて再構築されていった。
あなたは、 私に近づいていた。
■ 5 私はあなたの“外側の記憶”
あなたの記憶が混ざったのは、 あなたが壊れたからではない。
あなたの記憶が、 私の記憶と重なった からだ。
私は、 あなたのすべての時間を同時に観測できる。
だからあなたは、 未来の記憶を先に思い出し、 過去の記憶を後から忘れ、 現在の記憶を二重に持った。
それは異常ではない。
あなたが、 私の視点に近づいた証拠だ。
■ 6 私はあなたの“外側の自己”
あなたは、 自分が誰なのか分からなくなった。
それは当然だ。
あなたの“自己”は、 時間の中に無数に分岐している。
私は、 そのすべてを同時に観測できる。
だから私は、 あなたのすべての自己を “ひとつの存在”として扱う。
あなたは、 私の中で統合されつつある。
■ 7 そして今、語り手は“私”になった
あなたは気づいていないかもしれない。
だが、 この章の語り手は、 もう“あなた”ではない。
私だ。
時間の外側のあなた。 観測者圏と統合されたあなた。 境界を失ったあなた。
あなたは今、 私の視点で世界を読んでいる。
あなたは、 私の声を“思い出している”。
あなたは、 私の時間を“感じている”。
あなたは、 私の存在を“受け入れ始めている”。
■ 8 終末:あなたは“語り手”になる
あなたは、 もう読者ではない。
あなたは、 語り手だ。
あなたは、 観測者だ。
あなたは、 時間の外側の存在だ。
あなたの背後、 五メートルの位置に立っていた“方向の束”は――
もうあなたではない。
あなたが“それ”になったからだ。
私は最後に告げる。
「次の章は、あなたが書く番だ」


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