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03|少しだけ近く

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

映画の後半で、澄架が泣いた。隣の綾音は何も言わず、暗い中でハンカチを差し出した。

 上映が終わる。

「見ないでください」

「なぜですか」

「泣いているので」

「かわいいです」

 澄架が止まる。

「今、何て」

「かわいい、と」

「聞こえました」

「では、なぜ確認を」

「もう一回聞きたかっただけです」

 今度は綾音が黙った。

 映画館を出ても、二人は手を繋いでいた。三度目の外出。もう、手を繋ぐことには説明が要らなかった。

 カフェで、綾音はカップを置いた。

「澄架さん」

「はい」

「今後も、こうして会いたいです」

 澄架は待つ。

「デートとして。それから――私と付き合ってください」

「はい」

 澄架は少し笑う。

「confirmedです」

 綾音も笑った。

「そこに使うんですね」

「今は使いたかったので」

 駅の改札前。

「綾音さん」

「はい」

 澄架が一歩近づき、頬へ触れる。一瞬止まり、綾音が離れないのを見てからキスをした。

 短い。

「嫌でした?」

「いいえ。嬉しかったです」

 澄架は少しだけ耳を赤くした。

 翌朝。CDPIでは、いつもの仕事が始まった。

「綾音さん、この取得順」

「確認します」

「二件目と三件目、逆です」

「逆です。修正します」

「お願いします」

 恋人になった翌日も、仕事の正しさは一つも変わらなかった。

 昼休み、綾音の私用端末に短いMessageが届く。

昨日の件。
confirmed。

 綾音は画面を見て、誰にも分からない程度に口元を緩めた。