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06|朝まで

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

日が長くなり始めた頃。帰宅時間になって、強い雨と鉄道障害が重なった。

「終電、難しそうです」

 美咲が運行情報を見る。

「泊まっていきますか」

 理沙が訊いた。

「ここに?」

「はい」

 それから、きちんと続けた。

「朝まで一緒にいる、という意味です。それ以上を前提にはしません」

 美咲は少し笑った。

「分かりました。泊まりたいです」

 理沙のTシャツを借りる。

「大きい」

「そこまで違わないと思いました」

「違います」

 同じベッドへ入る。最初は間に一人分ほど空間があった。

 仕事場では話さないことを話した。美咲は植物の枯れた葉を切るとき少し迷うこと。理沙は眠る前、翌日の最初の予定だけ確認しないと落ち着かないこと。

 話しているうちに距離が縮まる。

 キス。

 もう一度。

 美咲が理沙の肩へ額を置いた。

「理沙さん」

「はい」

「今日はここまでにしません?」

「私もそうしたいです」

 返事は早かった。

「今日は、一緒に朝までいたいです」

「うん」

 手を繋ぐ。

 眠る少し前、美咲は理沙の呼吸がゆっくりになるのを聞いていた。

 朝。理沙が目を開ける。

「先に時計見ませんでしたね」

「起きていたんですか」

「はい」

「美咲さんを先に見ました」

 言ったあと、理沙は顔を逸らした。

「それ、今日一日覚えておきます」

「忘れてください」

「嫌です」

 美咲は新しい歯ブラシを洗面台へ残した。

 帰る前、何気なく言う。

「行ってきます」

 理沙が笑った。

「行ってらっしゃい」

 二本の歯ブラシの間には、まだ少し距離があった。