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07|仕事より先に

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

水城が綾音の異変に気づいた。

「綾音さん、顔色が悪いです」

「問題ありません」

「朝食は?」

「まだです」

「水分は」

 綾音が答えに詰まる。

「いったん止めましょう」

「あと一件です」

「止めます」

 立ち上がった身体が揺れた。

 医療チームが呼ばれ、発熱、脱水傾向、前夜からの過労が確認された。大きな異常はなかったが、勤務継続は認められなかった。

 白根の言葉は短かった。

「体調を崩した人間が、自分で仕事を止められない状態まで続けることを、責任感とは扱いません。帰って休んでください」

「はい」

 澄架は業務を残して駆けつけなかった。医療は医療チームが担当し、澄架にはAUTHの仕事がある。綾音も、それを望んだ。

 帰宅後。

帰りました。大丈夫です。

 送信して十分後、訂正する。

大丈夫ではないです。

 澄架から返る。

分かりました。
仕事が終わったら行きます。

 夕方、美咲が食べやすいものと飲み物を持って来た。

「思っていたよりひどい顔」

「医療チームにも類似評価を」

「横になってください」

 美咲は医療者の代わりをしなかった。水分、食事、医療チームから指示された観察点。それだけ確認し、キッチンに立つ。

 夜。

「美咲さん」

「はい」

「今日は、いてほしいです」

「います」

「面倒ですか。こういうの」

 美咲はしばらく答えなかった。

「大事に思う人がいると、面倒は増えると思います」

 理沙が見る。

「でも、だから大事にしない方を選びたいとは思わない」

 理沙は目を閉じた。

 翌朝、美咲は仕事へ行く。

「端末見ないでくださいね」

「はい」

「返事が早いと信用できない」

「見ません」

「よし」

 扉が閉まる。

 理沙は仕事用端末ではなく、本を取った。

 昼前、美咲からペンギンの写真が一枚届く。駅の売店に並んだ、小さなぬいぐるみ。文章はない。

 理沙は写真だけを返した。

 枕元に置いた、水のボトル。