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08|隠さなくても

INDEPENDENT / NON-CANON

『まだ、閉じない。|理沙と美咲』/第一連作

『観測者圏』の人物・世界設定を用いた独立した非正史作品です。本編正史には影響しません。

澄架が交際を口にしたのは、昼食の席だった。

 深苑が二つのペンギンを見て言う。

「それ、やっぱり同じですよね」

「付き合ってます」

 澄架が普通に答えた。

 一秒だけ静かになる。

「やっぱり」

 深苑。

「そうなんだ」

 水城。

 白羽はスープを飲んだまま言った。

「ペンギンより前から分かってた」

「なぜですか」

 綾音が訊く。

「そこまで職場で分析結果を開示する必要ある?」

 話はそれで終わり、すぐ別の話題へ移った。

 午後。TIMEとAUTHの合同Review。

「澄架さん。取得順が逆です」

「表示順を基準に置いていました。修正します」

 別の箇所。

「綾音さん、その異議はAUTH領域まで入りすぎです」

 綾音が読み直す。

「そのとおりです。撤回します」

 恋人同士になっても、相手の誤りを見逃さない。

 白根からは後で短い確認があった。

「直属の評価関係なし?」

「ありません」

「人事権限」

「ありません」

「案件上Conflictが出たら?」

「申告してReviewを分離します」

「分かりました」

 それだけだった。

 帰宅後、美咲は植物の葉を拭きながら言った。

「隠さない。でも、わざわざ言い回らない」

「はい」

「仕事で必要なら言う。答えたくない私生活のことは、私生活なので、で終わり」

「合理的です」

「恋愛の話で合理的って言われると、たまに不安になります」

 理沙は少し考えた。

「私は、それが好きです」

「何が」

「必要以上に見せなくても、なかったことにもしないところ」

 美咲は葉を拭く手を止めた。

「それなら、いいです」

 翌日も、職場では「綾音さん」「澄架さん」だった。