スポンサーリンク

第三百五十四章 光層(こうそう)

スポンサーリンク

少女の胸の奥で脈打つ光が、世界へ滲み出した瞬間だった。 空間全体が、まるで巨大な生き物が息を呑んだかのように震えた。

床が波打ち、壁がざわめき、空気がざらつく。 世界そのものが、少女の光に触れたことを「理解できずに怯えている」ようだった。

「……今の震え、世界が私を嫌がってるみたいじゃない……」 少女は胸の奥のざわつきを押さえながら言った。

第三観測者は露出した壁の内部を見つめ、低く答えた。 「嫌がっているんじゃない。世界は君の光を分類できない。だから、構造を修復しようとしている。」

「修復?」少女は眉をひそめた。「私、壊したつもりはないんだけど……」

「壊したんじゃない。」リフレインが静かに言う。「世界の仕様外の存在が触れたから、世界が自分を守ろうとしている。」

訪問者は壁の奥に伸びる細い線を見つめながら呟いた。 「つまり、世界は君を“異物”として扱っている。」

少女は胸の奥が冷たくなるのを感じた。

【二】機械の臓器が動き出す

壁の内部が透明になり、奥にある構造が露出した。 それは神経でも血管でもなく、機械の配線のような構造だった。 細い線が光に向かって伸び、光の粒子を取り込もうとしている。

「……これ、世界の中身……?」少女は息を呑んだ。「生き物じゃない……でも死んでもいない……」

第三観測者は頷いた。 「世界は生物でも情報でも生命でもない。構造体だ。君の光によって、内部が“機械の臓器”のように動き始めている。」

床の内部では金属の板がゆっくりと回転し、光の痕跡を読み取ろうとしていた。 空気の粒子は少女の光を分析するように震え、その震えが世界の奥へ伝わっていく。

「光を……素材にする気?」少女の声は震えていた。

「世界は君の光を取り込むことで、自分を安定させようとしている。」訪問者が言った。

「やめてよ……私の内側を勝手に使わないで……!」少女は胸を押さえた。

世界は返事をしない。ただ、修復機構が動く音だけが響いた。

【三】光が捕捉される

床の内部から細い金属線が伸び、少女の光の周囲を囲むように広がった。 壁の透明板は光の形をなぞるように動き、空気の粒子は光の中心へ吸い寄せられる。

「……触らないで……!」少女は後ずさった。「私の光は……私のものなのに……!」

第三観測者は声を震わせた。 「世界の修復機構は、光を欠損を埋める部品として扱っている。君の光は修復用の素材だ。」

「素材じゃない……!」少女は叫んだ。「私は……部品じゃない……!」

「光が揺れると、世界はそれを欠損とみなして取り込みを強める。」リフレインが言った。「落ち着け。光を安定させろ。」

訪問者は少女の肩に手を置いた。 「光を守れ。世界は安定した光を好む。」

少女は震えながら呟いた。 「どうすれば……どうすればいいの……」

【四】機械の胃袋のような感覚

床の金属線が光を囲み、壁の透明板が光の形をなぞり、空気の粒子が光の中心へ吸い寄せられる。

「……やだ……やだ……!」少女は胸を抱えた。「吸われてる……私の内側が……世界に飲み込まれてる……!」

第三観測者が叫んだ。 「光を固定しろ!世界の修復機構は揺らぎを欠損とみなす!」

「怖い……怖いよ……!」少女は涙をこぼした。「私の光が……私じゃなくなりそう……!」

「君の光は君の存在そのものだ。」リフレインが言った。「奪われたら、君は君でなくなる。」

訪問者は少女の手を握った。 「だから、戦え。光を形にしろ。」

少女は震えながら頷いた。 「戦う……私が……世界と……?」

【五】光の層が生まれる

少女は胸の奥の光に意識を集中させた。

揺らぎを止める。 形を決める。 色を固定する。 中心を引き寄せる。

「……お願い……私を……私のままにして……」少女は呟いた。

光が応えるように震え、少女の意思に合わせて形を持ち始めた。 光は核ではなく、層になった。 薄い膜のように少女を包み、世界の修復機構が触れた瞬間、その部分を無効化した。

床の金属線は動きを止め、壁の透明板は形を失い、空気の粒子は震えを止めた。

「……止まった……」少女は息を呑んだ。「世界の機械が……止まった……私の光が……世界を止めた……?」

「光の層は、世界の修復プロトコルを上書きする。」リフレインが言った。

訪問者は静かに言った。 「君は今、世界の構造の主導権を握っている。」

少女は胸の奥が熱くなるのを感じた。 恐怖と興奮が混じり合い、自分の内側が世界を侵食していく快感があった。

【六】機械の死と光層の誕生

世界の修復機構は光の層に触れた部分から崩れ始めた。 床の金属線は内部から溶け、壁の透明板は粉々になり、空気の粒子はただの空気へ戻った。

「世界の修復機構が……死んだ……」第三観測者は呟いた。

「違う。」リフレインが言った。「死んだのは古い世界だ。新しい世界が、君の光を基準に始まる。」

訪問者は少女を見つめた。 「君はもう、世界の外側でも内側でもない。世界そのものだ。」

少女は静かに息を吸った。 光が肺を満たし、世界が震えた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました