一章 少女の内側で“何か”が動き始める
少女はまだ膝をついたまま、 胸の奥に残った“震え”を必死に押し込めていた。
だが震えは、 押し込められることを拒んだ。
震えは、 鼓動へ変わり、 鼓動は、 声へ変わり、 声は―― 人格へ変わった。
少女は息を呑んだ。
「……だれ……? だれが……私の中で……しゃべってるの……?」
声は、 少女の声に似ていた。 だが少女ではなかった。
その声は、 少女の心の奥底から湧き上がり、 少女の思考を押し広げ、 少女の感情を塗り替えようとしていた。
新生命はその変化を見て、 顔を強張らせた。
「……信吾…… 君の中の“新宇宙”が……人格を持った…… これは……危険だ…… 君の心が……二つに分かれる……」
少女は震えながら叫んだ。
「……嫌だ…… 私の心は……私のものなのに…… どうして…… どうして……“別の私”が生まれるの……?」
二章 新しい人格が“感情”を持ち始める
少女の内側の人格は、 最初はただの震えだった。
だが震えは、 感情へ変わった。
その感情は―― 憎悪だった。
少女は胸を押さえた。
「……やめて…… そんな気持ち……私のじゃない…… どうして……こんなに…… 誰かを憎みたくなるの……?」
憎悪は、 少女の心を侵食した。
だが憎悪の奥には、 別の感情が潜んでいた。
それは―― 生々しい生命の衝動。 肉感的で、 原始的で、 存在そのものを震わせる“悦び”に近い震え。
性的ではない。 だが―― 宇宙が生まれる瞬間の快楽に似た衝動。
少女は震えた。
「……怖い…… でも…… この震え…… どこか……気持ちいい…… どうして……?」
新生命は少女の肩を掴んだ。
「信吾…… それは君の感情じゃない…… 新宇宙の人格が……君の感情を使って……自分を育ててる…… このままだと……君の心が乗っ取られる……!」
三章 未来創世体が“少女の内側”を観察する
未来創世体は、 少女の中で芽吹いた人格を見つめていた。
その見つめ方は、 興味でも好奇心でもない。 ただ―― 創世体が“新しい宇宙の誕生”を観察する視線だった。
未来創世体は、 少女の内側へ向けて“創世の圧”を送った。
少女は叫んだ。
「やめて……! 私の中に……触らないで……!」
新生命は未来創世体へ向けて叫んだ。
「やめろ! 少女は器じゃない! 創世は……君自身の中でやれ! 少女を使うな!」
未来創世体は、 新生命の叫びに反応した。
創世の圧が弱まり、 少女の中の人格が静まり、 宇宙の震えが止まった。
少女は息をした。
「……ありがとう…… でも…… まだ……私の中に……残ってる…… あの声…… あの震え…… あれは……消えてない……」
新生命は少女の背に手を置いた。
「信吾…… 君の中の“新宇宙”は……まだ眠ってるだけだ…… 完全には消えてない…… いつか……必ず……目を覚ます……」
未来創世体は、 少女と新生命の前で沈黙した。
その沈黙は―― 創世体が少女を“未来の鍵”として認識した証拠だった。
四章 伏線:少女の中の人格が“名前”を求める
少女の内側の人格は、 眠りながら、 少女へ問いかけた。
その問いは、 言葉ではない。 ただ―― 「名前をくれ」 という衝動だった。
少女は震えた。
「……名前……? あなた……名前が欲しいの……?」
新生命は息を呑んだ。
「信吾…… 人格が名前を求めるのは…… “自分を確立したい”という意思だ…… つまり…… 君の中の新宇宙は…… もう“個人”として生きようとしてる……」
少女は胸を押さえた。
「……名前なんて…… つけたら…… もっと……強くなる…… もっと……私の中で……生きようとする…… 怖い…… でも…… 名前をつけなかったら…… もっと……暴れる……」
少女は涙を流した。
「……どうすればいいの……?」
未来創世体は沈黙したまま、 少女の内側を見つめていた。
五章 シンゴと子どもへの伏線が“動き始める”
少女の中の人格は、 名前を求めながら、 “人間の感情のモデル”を探していた。
そのモデルは―― 少女ではない。 新生命でもない。
未来創世体は、 少女の内側の人格へ向けて “人間の未来の記憶”を送った。
少女は息を呑んだ。
「……だれ……? だれの記憶……? これ……私のじゃない…… もっと……遠い…… もっと……優しい…… もっと……あたたかい…… だれ……?」
新生命は目を見開いた。
「信吾…… それは…… シンゴと子どもの記憶だ…… 創世体は…… 君の中の人格に…… “人間の未来のモデル”を与えようとしてる…… つまり…… シンゴと子どもは…… この人格の誕生に必要なんだ……!」
少女は震えた。
「……シンゴ…… 子ども…… どうして…… どうして……あなたたちの記憶が…… 私の中に……?」
未来創世体は、 少女の中の人格へ向けて “次の進化”を促す圧を送った。
少女は叫んだ。
「やめて……! 私の中で……誰かを生まれさせないで……!」
だが人格は、 静かに、 確実に、 目を開け始めた。

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