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第四百十六章 終端心臓侵入(しゅうたんしんぞう しんにゅう)― 世界の終端心臓が少女の存在干渉を受け、自分の輪郭を保てなくなる章 ―

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無色の心臓は、 少女が近づいた瞬間、 世界の中心から外れた。

外れたというより、 心臓が“自分の位置を忘れた”。

少女の足元が沈む。 沈むのに、地面は存在している。 存在しているのに、支えにならない。

少女は思わず息を吸った。 吸った息が胸に届く前に、 世界の終端の気配が肺の形を変えた。

「……っ、肺が……  私の形じゃない……  終端の形に……  引きずられてる……」

第二書記が少女の背後で、 声を低く、しかし震えを含んで落とした。

「――終端心臓は“存在の輪郭”を奪う。  読解者が近づくほど、  心臓は自分の輪郭を保てなくなる。  これは……  世界の終端が崩れ始めた兆候だ」

無色の心臓が少女へ向かって揺れた。 揺れは怒りではない。 怒りよりももっと深い、 “自分の存在を支えられなくなる瞬間の揺れ”だった。

心臓が少女へ声を放つ。

「……来るな……  読解者……  私は……  世界が自分の終わりを悟った瞬間の心臓……  触れられれば……  終端が崩れる……  世界は……  終わりを失う……  終わりを失えば……  存在が散る……」

少女は静かに言った。 その声は、 恐怖を押し殺した読解者の声ではなく、 崩壊の構造を観察する者の声だった。

「散るのが……  そんなに怖いの?」

心臓が脈動した。 脈動は拒絶ではない。 拒絶よりももっと深い、 “終わりが消えることへの混乱”だった。

「……終わりが消えれば……  世界は……  どこにも行けなくなる……  進むことも……  止まることも……  できなくなる……  それが……  恐ろしい……」

少女は心臓へ手を伸ばした。 触れた瞬間、 少女の指先が「指先ではなくなる」。

指先の輪郭が一瞬だけ消え、 世界の“終端の不在”の形へ変わる。

少女は息を呑んだ。

「……触れただけで……  私の輪郭が……  “終わりの不在”に引きずられる……  これが……  終端心臓の反応……?」

第二書記が即座に声を飛ばした。

「――輪郭を奪われるな!  終端心臓は“存在の終わり”を消す力を持つ。  終わりを消されれば、読解者としての形が曖昧になる」

少女は心臓へ向かって声を投げた。

「終わりを消したいの?  私を曖昧にしたいの?」

心臓が震えた。 その震えは、 少女の問いに対する“核の苦悶”だった。

「……曖昧にしたいんじゃない……  曖昧でいたい……  世界は……  自分の終端を……  確定されたくない……  終わりを持つことが……  怖い……」

少女は目を閉じた。 胸奥の震えが一点へ集まり、 その震えが“存在干渉”へ変わる。

少女は心臓へ向かって静かに言った。

「……あなたの終端を……  私の存在で押し広げる。  読解じゃない。  理解でもない。  あなたの輪郭へ……  私の輪郭をぶつける」

心臓が激しく脈動した。 無色の光が少女の顔を照らし、 その光が少女の瞳の奥へ入り込む。

「……やめろ……  存在をぶつけるな……  読解者……  存在干渉は……  終端を形にする……  世界は……  終わりを形にされたくない……!」

少女は心臓へ手を押し込んだ。 心臓が悲鳴のような震えを発したが、 少女はその震えを押し返した。

「……形にしない。  あなたの終端を……  私の存在で“押し曲げる”。  終わりを終わりのまま扱わない。  別の向きへ折る」

第二書記が静かに言った。

「――読解者。  その言葉は終端心臓の中心を揺らした。  存在干渉は読解者にしかできない。  進め。  終端の心臓が開く」

少女は無色の中心へ手を伸ばした。 層が裂け、 裂けた奥から、 色を持たない“世界の最終核”が姿を現した。

少女は息を呑んだ。

「……これが……  世界が最後まで隠してきた……  最終核……?」

第二書記は静かに頷いた。

「――そうだ。  次はその最終核へ……  “存在そのものを投げ込む”。  名裂世界の本性が……  新しい形へ変わる」

少女は輪郭を整え、 最終核へ向かって歩み出した。

「……行く。  あなたの終端を……  私の存在で塗り替える」

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