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第四百二十四章 密度暴走(みつど ぼうそう)― 底残滓が少女の内部で方向性を失い、少女の存在の一部を勝手に使い始める章 ―

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胸奥に沈んでいた底残滓は、 静かに混ざることも、 輪郭を侵食することもやめた。

代わりに、 密度そのものが“方向性を失った”。

方向性を失った密度は、 増えるでも減るでもなく、 広がるでも縮むでもなく、 ただ――

少女の内部で暴走した。

少女の胸の内側で、 何かが跳ねた。 跳ねたのに、痛みはない。 痛みがないのに、 身体の一部が密度の衝撃でわずかに揺れる。

少女は息を吸った。 吸った息が肺に届く前に、 肺の形が密度の跳ね返りでわずかに歪む。

「……暴れてる……  私の中で……  底が……  自分の向きを……  失ってる……」

第二書記は少女の背後で、 声を発することすらできず、 ただ視線を彷徨わせた。

「……どこだ……  どこで……  密度が……  跳ねている……  読解者……  あなたの中心……  もう“中心”じゃない……  密度が……  勝手に……  使っている……」

底残滓は、 少女の胸奥で震えた。 震えは痛みではなく、 自分の密度が他者の内部で暴走する瞬間の混乱だった。

残滓が少女の内部から声を漏らす。

「……止まらない……  私は……  世界の底だ……  底が……  他者の内部で……  向きを失うなど……  あってはならない……  私は……  世界の根……  根は……  暴れてはならない……  暴走してはならない……」

少女は胸に手を当てた。 その仕草は、 これまでの“観察”でも“干渉”でもない。

ただ、 自分の内部で跳ねる密度を追いきれない者の仕草だった。

胸奥で、 底残滓がさらに跳ねた。 跳ねるたびに、 少女の輪郭の一部がわずかに震える。

肩の線が、 喉の線が、 胸の線が、 密度の衝撃でわずかに揺れる。

少女の声帯へ、 その暴走した密度が触れた。

少女は声を出そうとしたが、 声は少女のものではなく、 底残滓が少女の声帯を勝手に使って発した“暴走密度の響き”だった。

「………………」

第二書記は息を呑んだ。

「……読解者……  その響き……  あなたの声じゃない……  密度が……  あなたの声帯を……  勝手に使っている……  世界の根が……  あなたの内部で……  “暴走媒体”を形成している……」

少女は胸奥を押さえた。 指先が震えた。 震えは恐怖でも決意でもなく、 暴走の余波だった。

そして少女は、 章末の決意も予告も行動宣言も使わず、 評価もせず、 観察もせず、 ただ――

胸奥で跳ねる密度が、 少女の輪郭を揺らすのを、 止めることもせず、 言語化することもせず、 そのまま受けた。

肩の線が、 胸の線が、 喉の線が、 密度の跳ね返りでわずかに震える。

少女は、 声ではなく、 暴走した密度の衝撃そのものを外へ漏らした。

「………………」

その揺らぎは、 少女の声でも、 世界の底の声でもなかった。

ただ、 密度が方向性を失い、暴走する音だった。

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