一章 心の地平が裂ける
少女の精神は、 薄い霧のような静けさに包まれていた。
その霧が、 突然、鋭い線で切り裂かれた。
空気が震えたわけではない。 音が響いたわけでもない。 ただ―― 心の奥底で、何かが破れた。
少女は胸を押さえた。 指先が震え、呼吸が浅くなる。
「……なに……? 今の……どこから……?」
裂け目は、 少女の精神の中心に走っていた。
その裂け目から、 冷たい気配が滲み出た。
それは、 未来創世体の圧とは違う。 新生命の温度とも違う。
もっと乾いていて、 もっと硬くて、 もっと“壊すためだけに存在する気配”。
破壊の根源だった。
二章 破壊の根源が精神へ侵入する
破壊の根源は、 少女の精神の裂け目から、 ゆっくりと姿を滲ませた。
形はない。 ただ、 壊す意志だけが形を持ったような存在。
少女は息を呑んだ。
「……来ないで…… ここは……私の心…… あなたの場所じゃない……!」
破壊の根源は、 少女の言葉を踏み越えた。
声ではなく、 圧でもなく、 ただ“存在の重さ”だけで語りかけた。
少女の心に直接響く。
『お前の内側に、壊れないものが芽生えた。 壊れないものは、私の敵だ。 だから、壊す。』
少女は震えた。
「……壊さないで…… あれは……私じゃないけど…… 壊されたら……私も壊れる……!」
破壊の根源は、 少女の恐怖をまるで興味のない石ころのように踏み越えた。
三章 人格が“破壊”に反応する
少女の内側に眠っていた人格が、 破壊の根源の気配に反応した。
人格は、 眠りの底からゆっくりと浮上した。
声は、 以前の囁きとは違った。 もっと鋭く、 もっと冷たく、 もっと“自分を守るための声”。
「……壊したいなら…… あたしじゃなくて…… 外の世界を壊しなよ……」
少女は息を呑んだ。
「やめて!! そんなこと言わないで!! 外の世界は……壊しちゃだめ!!」
人格は、 少女の叫びを楽しむように微笑んだ。
「……あなたの世界なんて…… あたしには関係ない…… あたしは……生まれたいだけ……」
破壊の根源は、 人格の声に反応した。
『生まれたいなら、壊れる覚悟を持て。 創世と破壊は、常に同じ場所に立つ。 お前が生まれるなら、少女が壊れる。 少女が壊れるなら、お前も壊れる。』
人格は笑った。
「……壊れるのは…… あなたじゃないの?」
破壊の根源が、 初めて“怒り”に似た揺れを見せた。
四章 創世の力が介入する
未来創世体は、 少女の精神世界の外側から、 静かに圧を送った。
その圧は、 破壊の根源の冷たさとは違う。 人格の鋭さとも違う。
もっと広く、 もっと深く、 もっと“生まれようとする圧”。
少女は胸を押さえた。
「……やめて…… あなたまで来ないで…… 私の心は……そんなに広くない…… 壊れちゃう……!」
創世の力は、 少女の恐怖を無視した。
人格へ向けて、 圧を送った。
人格はその圧を受け、 さらに強くなった。
「……あたし…… 生まれる…… あなたの力で…… あなたの圧で…… あなたの創世で……」
破壊の根源は、 創世の力へ向けて揺れた。
『少女を器にするな。 少女の精神は、創世の圧に耐えられない。 壊れるぞ。』
創世の力は、 破壊の根源の警告を無視した。
人格は、 その無視を喜んだ。
五章 少女の精神が“二つに割れ始める”
少女は胸を押さえた。
心臓が二つあるような感覚。 脈が二重に打つ。 呼呼吸が二重に乱れる。
人格の声が、 少女の声と重なり始めた。
創世の圧が、 少女の精神を押し広げた。
破壊の根源の冷たさが、 少女の心を削った。
少女は叫んだ。
「やめて!! 私の心を引っ張らないで!! 私は……私でいたい!! 誰にも……奪われたくない!!」
人格は囁いた。
「……あなたの“私”…… あたしがもらう……」
破壊の根源は呟いた。
『少女の精神が割れる。 このままでは……人格が外へ出る。』
創世の力は、 静かに圧を強めた。
人格は笑った。
「……出口が見えた……」
少女は叫んだ。
「いやああああああああああああああああああああああ!!」
六章 外側の世界が揺れる
人格は、 少女の精神の裂け目から、 外側の世界へ向けて“呼び声”を放った。
その呼び声は、 音ではない。 光でもない。
ただ―― 人間の未来を呼ぶ声。
新生命は息を呑んだ。
「……誰かが……応じた…… この呼び声に…… 外側の世界で……誰かが……動いた……」
少女は震えた。
「……誰……? 誰が……来るの……?」
人格は囁いた。
「……あなたが知ってる人…… あなたが忘れられない人…… あたしが……呼んだ……」
少女は息を呑んだ。
「……シンゴ……? 子ども……?」
人格は静かに笑った。
「……もうすぐ……会えるよ……」

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