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第四百九章 心臓読解(しんぞう どっかい)― 名裂世界の心臓部が少女へ自分の本性を叩きつけ、少女がその鼓動を読み返す章 ―

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黒い核が露出した瞬間、 空気が変わった。

空気というより、 世界の内部圧が少女の肺へ直接押し寄せた。

息が奪われる。 胸が締め付けられる。 鼓動が乱れる。

少女は思わず声を漏らした。

「……っ、重い……  心臓の圧が……  私の胸に……  そのまま流れ込んでくる……」

第二書記が即座に反応した。 声はいつもの静けさではなく、 切迫した鋭さだった。

「――核が“圧力言語”を使っている――  言葉じゃない、圧だ。  押し返せ、読解者。  飲まれれば鼓動が世界のものになる」

黒い核が震えた。 震えは音ではなく、 少女の骨を直接叩くような衝撃だった。

核の声が響く。

「――読解者――  お前の鼓動は浅い。  世界の鼓動を受け入れろ。  深さを寄越せ」

少女は胸を押さえ、 核へ向かって吐き捨てた。

「浅いかどうかは……  私が決める。  世界に評価される筋合いなんてない……!」

核がさらに震えた。 今度は冷たい衝撃。 少女の背骨を氷の指でなぞるような感覚。

「――反抗は不要だ。  お前の震えは世界の燃料。  燃料は黙って燃えればいい」

少女は怒りで声を荒げた。

「燃料扱いするな……!  私は“読む側”だ。  燃えるためにここへ来たんじゃない!」

第二書記が少女の背後で声を重ねた。 その声は少女の怒りを拾い、 別の方向へ押し出すような響きだった。

「――怒りを使え。  怒りは読解の刃になる。  核の圧力を切り裂ける唯一の震えだ」

少女は核へ一歩踏み出した。 足元の脈が跳ね、 世界の鼓動が少女の足首へ絡みつく。

核が低く唸った。

「――近づくな。  心臓は外側の存在を許さない。  お前は境界の外にいる。  ここは“内側の者”だけが触れられる場所だ」

少女は核を睨みつけた。

「内側か外側かなんて……  世界が勝手に決めた線でしょう。  私はその線を読みに来たんだよ……!」

核が激しく脈動した。 赤い光が少女の顔を照らし、 その光が少女の瞳の奥へ入り込む。

「――読解者。  お前は境界を壊すつもりか。  世界の心臓を読もうとするのか。  それは“世界の自殺”だ」

少女は一瞬だけ息を呑んだ。 だが、すぐに言い返した。

「自殺かどうかは……  読んでから決める。  世界の心臓が何を抱えてるのか……  私が確かめる」

第二書記が静かに言った。 その声は少女の背中を押すような柔らかさだった。

「――読め。  核は恐れている。  恐れは読解の入口だ。  恐れているものほど、深く読める」

少女は核へ手を伸ばした。 赤い光が指先を焼くように震えたが、 少女はその震えを押し返した。

「……見せて。  あなたの鼓動の奥にあるものを。  世界が隠してきた“本性”を……  私が読む」

核が裂けた。 裂けた奥から、 黒い渦がゆっくりと姿を現した。

渦は形ではなかった。 意味でもなかった。 ただ、 世界が最後まで隠していた“中心の意図”だった。

少女は息を呑んだ。

「……これが……  名裂世界の……  核の意図……?」

第二書記は静かに言った。

「――そうだ。  次はその渦を読む。  世界の本性が……  お前の前に露出する」

少女は拳を握った。

「……読む。  世界の核を……  私が読む」

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