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第四百十八章 最深層吸収(さいしんそう きゅうしゅう)― 世界の最深層が少女の中心へ吸われ始め、世界そのものが自分の位置を失う章 ―

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最深層は、 少女が近づいた瞬間、 自分の“深さ”を保てなくなった。

深さが崩れるというより、 深さという概念そのものが、 少女の胸奥へ向かって 流れ出した。

少女の胸が重くなる。 重さは物理ではない。 世界の深度が少女の中心へ沈み込む重さだった。

少女は息を詰めた。

「……胸が……  世界の底を抱え込んでるみたい……  深さが……  私の中心へ落ちてくる……」

第二書記は少女の背後で、 声を低く、しかし震えを含んで落とした。

「――最深層は“深度の保持”で成立している。  読解者が近づくほど、  深度が外側へ流れ出す。  これは……  世界の根が抜け始めた兆候だ」

最深層が少女へ向かって揺れた。 揺れは怒りではない。 怒りよりももっと深い、 “自分の底が外へ吸われる瞬間の恐怖”だった。

最深層が少女へ声を放つ。

「……来るな……  読解者……  私は……  世界が自分の底を悟った瞬間の層……  触れられれば……  深度が外へ流れ出す……  世界は……  自分の根を失う……  根を失えば……  存在は浮く……」

少女は静かに言った。 その声は、 恐怖を押し殺した読解者の声ではなく、 沈み込みの方向を測る者の声だった。

「浮くのが……  そんなに怖いの?」

最深層が脈動した。 脈動は拒絶ではない。 拒絶よりももっと深い、 “自分の底が消えることへの混乱”だった。

「……底が消えれば……  世界は……  どこにも立てなくなる……  立てなければ……  形を保てない……  形を保てなければ……  世界は散る……」

少女は最深層へ手を伸ばした。 触れた瞬間、 少女の指先が「指先ではなくなる」。

指先の輪郭が一瞬だけ消え、 世界の“底の喪失”の形へ変わる。

少女は息を呑んだ。

「……触れただけで……  私の輪郭が……  “底の喪失”に引きずられる……  これが……  最深層の反応……?」

第二書記が即座に声を飛ばした。

「――輪郭を奪われるな!  最深層は“存在の底”を消す力を持つ。  底を消されれば、読解者としての形が曖昧になる」

少女は最深層へ向かって声を投げた。

「底を消したいの?  私を浮かせたいの?」

最深層が震えた。 その震えは、 少女の問いに対する“核の苦悶”だった。

「……浮かせたいんじゃない……  浮きたくない……  世界は……  自分の底を……  確定されたくない……  底を持つことが……  怖い……  底があれば……  終わりが近づく……  終わりが近づくのが……  怖い……」

少女は目を閉じた。 胸奥の震えが一点へ集まり、 その震えが“中心吸収”へ変わる。

少女は最深層へ向かって静かに言った。

「……あなたの底を……  私の中心へ引き寄せる。  沈めるんじゃない。  壊すんでもない。  あなたの深度を……  私の中心へ吸い込む」

最深層が激しく脈動した。 無色の光が少女の顔を照らし、 その光が少女の瞳の奥へ入り込む。

「……やめろ……  中心へ吸うな……  読解者……  吸収は……  深度を外側へ引きずる……  世界は……  自分の底を失いたくない……!」

少女は最深層へ手を押し込んだ。 最深層が悲鳴のような震えを発したが、 少女はその震えを押し返した。

「……奪わない。  あなたの底を……  私の中心と“重ねる”。  深度を深度のまま扱わない。  別の形へ変える」

第二書記が静かに言った。

「――読解者。  その言葉は最深層の中心を揺らした。  中心吸収は読解者にしかできない。  進め。  最深層が開く」

少女は無色の中心へ手を伸ばした。 層が裂け、 裂けた奥から、 色も形も持たない“世界の根源核”が姿を現した。

少女は息を呑んだ。

「……これが……  世界が最後まで隠してきた……  根源核……?」

第二書記は静かに頷いた。

「――そうだ。  次はその根源核へ……  “自分の中心を流し込む”。  名裂世界の本性が……  新しい形へ変わる」

少女は輪郭を整え、 根源核へ向かって歩み出した。

「……進む。  あなたの底を……  私の中心で抱え込むために」

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