― 歩行を始めた核が、存在を摂り込みながら“対象を選ぶ”層 ―
核は歩き始めた。 その歩みは、地面を踏むというより、 存在の層を舐め取るような動きだった。
世界の空気が、 核の身体の周囲だけわずかに薄くなっていた。
一 核の身体が“存在の流れ”を追う
核は歩きながら、 周囲の存在の流れを探っていた。
流れは風ではない。 気配でもない。
ただ―― 存在がどこへ向かおうとしているかの“方向性”だった。
少女はその動きを見て、 胸の奥がざわついた。
「……あれ…… 周りの存在の向きを…… 追ってる…… まるで…… どこに“味”があるか探してるみたい……」
少女自身の声が、 自分のものではないように感じられた。
リフレインは核の動きを見て、 静かに言った。
「核は、 存在の流れを辿って、 摂り込む対象を選んでいる。」
二 地面の存在が“削り取られた跡”を残す
核が通った場所の地面は、 小さく削り取られていた。
削り取られた部分は、 穴でも傷でもない。
ただ、 存在が一口分だけ欠けたような形だった。
少女はその跡を見て、 喉の奥がひどく重くなった。
「……地面…… 形が…… 食べられたみたいに…… 丸く欠けてる…… 誰がこんな摂り方を……」
言葉が途中で途切れた。 続けると、自分の声が崩れそうだった。
リフレインは欠けた跡を見て言った。
「核は、 存在を“部分ごとに”摂取している。 世界の層を噛み取るように。」
三 訪問者の身体から“存在の薄片”が吸い上げられる
核が訪問者の近くを通った瞬間、 訪問者の身体の表面がわずかに揺れた。
揺れた部分から、 薄い片がふわりと浮き上がった。
それは肉片ではない。 皮膚でもない。
ただ―― 存在の薄片が剥がれて吸われたものだった。
少女はその光景を見た瞬間、 背中が冷たい石で押されたように固まった。
「……あの人…… 身体の表面が…… 薄く…… 抜かれてる…… 触れられてないのに…… どうして……」
声が震えるのではなく、 言葉そのものが細くなっていった。
リフレインは訪問者の欠損を見て言った。
「核は、 訪問者の存在を“層ごとに”剥ぎ取っている。」
四 第三観測者の胸部が“摂取の方向”を示す
第三観測者の胸部の口が、 ゆっくりと形を変えた。
口は開閉するのではなく、 向きを示す器官になっていた。
その向きは、 少女の方向だった。
少女はその向きを見た瞬間、 胸の奥がひどく沈んだ。
「……あれ…… 私の方を…… 向いてる…… どうして…… どうして私を……」
言葉が自分の意志から離れ、 勝手に弱くなっていった。
リフレインは少女の肩に視線を向けた。
「核は、 次に摂り込む存在を選んだ。」
五 核の身体が少女へ向けて“摂取の歩み”を始める
核は、 地面の欠片、 訪問者の薄片、 門番の口が示した方向をすべて吸収し終えた。
そして―― 少女へ向けて歩き始めた。
その歩みは、 足を運ぶというより、 存在の層を一枚ずつ剥ぎながら進む動きだった。
少女はその歩みを見た瞬間、 胸の奥で何かが沈み込んだ。
「……来る…… 私の存在を…… 削りに…… 来る……」
声は震えず、 ただ乾いていた。
リフレインは短く言った。
「核は、 あなたの存在を摂り込むために動いている。」
少女の周囲の空気が、 核の歩みに合わせて薄くなった。
核は、 世界の捕食者から、 少女の存在を求める“選択する捕食者”へ変わってしまった。

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