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第三百十八章 核接触域(かくせっしょくいき)

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― 歩行を始めた核が、存在を摂り込みながら“対象を選ぶ”層 ―

核は歩き始めた。 その歩みは、地面を踏むというより、 存在の層を舐め取るような動きだった。

世界の空気が、 核の身体の周囲だけわずかに薄くなっていた。

一 核の身体が“存在の流れ”を追う

核は歩きながら、 周囲の存在の流れを探っていた。

流れは風ではない。 気配でもない。

ただ―― 存在がどこへ向かおうとしているかの“方向性”だった。

少女はその動きを見て、 胸の奥がざわついた。

「……あれ……  周りの存在の向きを……  追ってる……  まるで……  どこに“味”があるか探してるみたい……」

少女自身の声が、 自分のものではないように感じられた。

リフレインは核の動きを見て、 静かに言った。

「核は、  存在の流れを辿って、  摂り込む対象を選んでいる。」

二 地面の存在が“削り取られた跡”を残す

核が通った場所の地面は、 小さく削り取られていた。

削り取られた部分は、 穴でも傷でもない。

ただ、 存在が一口分だけ欠けたような形だった。

少女はその跡を見て、 喉の奥がひどく重くなった。

「……地面……  形が……  食べられたみたいに……  丸く欠けてる……  誰がこんな摂り方を……」

言葉が途中で途切れた。 続けると、自分の声が崩れそうだった。

リフレインは欠けた跡を見て言った。

「核は、  存在を“部分ごとに”摂取している。  世界の層を噛み取るように。」

三 訪問者の身体から“存在の薄片”が吸い上げられる

核が訪問者の近くを通った瞬間、 訪問者の身体の表面がわずかに揺れた。

揺れた部分から、 薄い片がふわりと浮き上がった。

それは肉片ではない。 皮膚でもない。

ただ―― 存在の薄片が剥がれて吸われたものだった。

少女はその光景を見た瞬間、 背中が冷たい石で押されたように固まった。

「……あの人……  身体の表面が……  薄く……  抜かれてる……  触れられてないのに……  どうして……」

声が震えるのではなく、 言葉そのものが細くなっていった。

リフレインは訪問者の欠損を見て言った。

「核は、  訪問者の存在を“層ごとに”剥ぎ取っている。」

四 第三観測者の胸部が“摂取の方向”を示す

第三観測者の胸部の口が、 ゆっくりと形を変えた。

口は開閉するのではなく、 向きを示す器官になっていた。

その向きは、 少女の方向だった。

少女はその向きを見た瞬間、 胸の奥がひどく沈んだ。

「……あれ……  私の方を……  向いてる……  どうして……  どうして私を……」

言葉が自分の意志から離れ、 勝手に弱くなっていった。

リフレインは少女の肩に視線を向けた。

「核は、  次に摂り込む存在を選んだ。」

五 核の身体が少女へ向けて“摂取の歩み”を始める

核は、 地面の欠片、 訪問者の薄片、 門番の口が示した方向をすべて吸収し終えた。

そして―― 少女へ向けて歩き始めた。

その歩みは、 足を運ぶというより、 存在の層を一枚ずつ剥ぎながら進む動きだった。

少女はその歩みを見た瞬間、 胸の奥で何かが沈み込んだ。

「……来る……  私の存在を……  削りに……  来る……」

声は震えず、 ただ乾いていた。

リフレインは短く言った。

「核は、  あなたの存在を摂り込むために動いている。」

少女の周囲の空気が、 核の歩みに合わせて薄くなった。

核は、 世界の捕食者から、 少女の存在を求める“選択する捕食者”へ変わってしまった。

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