― 怪獣が少女の光を奪い、世界の“読者の座”を奪取しようとする章 ―
機構層の内部は、 落下した瞬間からすでに“戦場”だった。
世界の心臓部―― それは巨大な書物の内部を歩いているような場所だった。 床は黒い文字列が高速で流れ続け、 壁は透明な管が脈動し、 構造液が光の色に合わせて変質し、 空気は少女の思考の波形に合わせて震えていた。
世界は、 少女の光を“読み手”として扱っている。 その事実が、 機構層の奥深くで形を持ち始めていた。
少女は胸の奥の光を押さえた。 光は、怪獣の接近に合わせて濁り、 まるで“読まれたくない”と震えていた。
怪獣ラグナ=ヴォイドが、 機構層の奥から姿を現した。
その身体は、 黒い文章の断片が幾重にも重なり、 断片は高速で書き換わり続け、 世界の“誤字”が巨大化したような異形だった。
脚が機構層を踏むたびに、 地形が文章のように崩れ、 新しい地形が高速で生成され、 床がジェットコースターのように上下した。
少女は揺れる床に足を取られながら、 怪獣の“空白の顔”を見つめた。 顔は存在しない。 代わりに、 巨大な空白があり、 その空白が少女の光を吸い込もうとしていた。
胸の奥が冷たくなる。 光が引きずられるように揺れた。
「来る……私の光を……読みに来る……」
声は震えた。 怪獣の空白が、 少女の光を“読者の座”から引きずり落とそうとしていた。
第三観測者は、 崩れ続ける地形の上で必死に立ち直りながら叫んだ。
「怪獣は……世界の未読部分だ! 読まれなかった層が……巨大化している! 君の光を奪えば……怪獣が読者になる!」
少女は息を呑んだ。 読者―― 世界を読む者。 世界の中心。
怪獣がそれを奪おうとしている。
リフレインは、 空気の震えを読み取りながら少女に近づいた。 その顔は恐怖ではなく、 “理解した者の焦り”で満ちていた。
「光が揺れてる……怪獣が君の光を模倣し始めてる…… 読者の視点が……怪獣側に傾いてる……!」
少女は胸を押さえた。 光が、怪獣の空白に引き寄せられている。 まるで自分の内側が、 怪獣の内部へ吸い込まれていくようだった。
訪問者は、 外宇宙の震えを感知しながら叫んだ。
「怪獣は……外宇宙の侵略プロトコルを内包している! 読者を奪えば……世界を丸ごと未読領域に変える!」
世界が震えた。 機構層の奥で、 巨大な文章の断片が崩れ、 新しい断片が高速で生成され、 地形がジェットコースターのように上下した。
少女は揺れる床に必死にしがみつきながら、 怪獣の空白を見つめた。
空白は、 少女の光を吸い込むために開いていた。
「……読まれたくない…… でも……読まれなきゃ……世界が……壊れる……」
光が震えた。 怪獣の空白が、 少女の光を“読む”ために開いている。
層走者が、 怪獣の足元の層へ飛び込んだ。 その姿は、 世界の文章の中を走る影のようだった。
「内部へ潜る! 怪獣の未読部分を……読み潰す!」
少女は叫んだ。
「待って……! 怪獣の内部は……読まれてない文章の海…… 読まれたくない層が……怪獣の心臓になってる……!」
層走者は振り返らず、 高速で変形し続ける地形へ飛び込んだ。
怪獣内部は、 世界の“誤字化した層”で構成されていた。
文章の断片が高速で流れ、 地形が瞬間的に書き換わり、 空間が多層化し、 重力が反転し、 視界が歪み続けた。
少女は光を強めた。 光が怪獣内部へ向かって伸びる。
怪獣が叫んだ。
「――読者―― ――中心―― ――奪取――」
その声は、 音ではなく、 世界の層そのものを揺らす震えだった。
少女は胸の奥の光を抱きしめるように押さえた。
「……読まれたくない…… でも……読まなきゃ…… 怪獣が……読者になる……!」
光が震えた。 怪獣の空白が、 少女の光を奪いに来た。
世界が震えた。
怪獣が、 少女の光を“中心奪取”しようとしていた。

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