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第百九十八章 観測者圏・核の目醒め

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一章 闇の底で光が産声をあげる

世界は死んだように静まり返っていた。 風はなく、音はなく、生命の気配すら消えている。 ただ、漆黒の空だけが、ゆっくりと脈打っていた。

少女は胸の光を抱きしめていた。 光は弱く、まるで世界の終わりに怯えているようだった。

「……まだ終わってない」 少女の声はかすれていたが、確かに響いた。

シンゴは崩れた広場の瓦礫に手をつき、ゆっくりと立ち上がった。 「終わってねぇよ。終わらせねぇ。  あいつらが“核”を送ってくるなら……迎え撃つしかねぇ」

子どもは少女の背にしがみつきながら、空を見上げた。 「でも……空が真っ黒だよ……  星もない……月もない……  世界が……どこにもないみたい……」

少女は子どもの頭を撫でた。 「世界はまだここにある。  私たちが選んだ世界は……まだ消えてない」

その瞬間、漆黒の空が“内側から”光った。

黒の中に、白い線が走った。 線はゆっくりと形を作り、やがて巨大な円となった。

円は“目”だった。

世界全体を見下ろす、巨大な観測者圏の“核の眼”。

少女は息を呑んだ。 「……観測者圏の核……  世界を丸ごと観測するための……“本体”……」

シンゴは拳を握りしめた。 「来やがったな……!」

子どもは震えながら言った。 「こわい……あの目……全部見てる……  ぼくのことも……世界のことも……全部……」

少女は子どもを抱き寄せた。 「見られてもいい。  私たちは……選ぶから」

二章 核の声

巨大な眼が開いた。

音はなかった。 だが世界の地面が震え、空気が裂け、生命の残骸が揺れた。

そして―― 声が降りてきた。

「創造者たち」 声は世界全体に響いた。 耳ではなく、骨で聞く声だった。

「あなたたちの世界は、観測者圏の“終末評価”に入った。  これより、世界の価値を測定する」

少女は叫んだ。 「価値なんて……測らないで!!  この世界は……私たちが作ったの!!」

核の眼は少女を見た。 その視線は、光でも影でもない。 ただ、存在そのものを“測る”視線。

「創造者の光。  観測器の残響。  あなたの力は、まだ不完全」

少女の胸が痛んだ。 「違う……これは私の光……!」

核の眼はシンゴへ向いた。 「影の創造者。  あなたの怒りは強い。 だが怒りは世界を壊す」

シンゴは歯を食いしばった。 「壊すために怒ってるんじゃねぇ……守るためだ!」

核の眼は子どもへ向いた。 「純粋な選択。  だが純粋さは世界を揺らす。  揺らぎは危険」

子どもは震えながら言った。 「ぼく……生きたい……  みんなと……生きたい……!」

核の眼は静かに言った。

「ならば――証明しろ。  あなたたちの世界が“観測を完了する価値”を持つことを」

三章 終末の光

核の眼が開き、世界全体が白く染まった。

白ではない。 光でもない。 ただ、“観測そのもの”の色。

地面が溶けた。 空が崩れた。 風が止まり、影が消え、光が飲み込まれた。

少女は叫んだ。 「やめて!! 世界を壊さないで!!」

核の眼は答えた。 「壊しているのではない。  “観測している”だけだ」

シンゴが叫んだ。 「観測で世界が壊れてるんだよ!!」

核の眼は静かに言った。 「世界は観測によって形を持つ。  観測によって壊れることもある。  それが“終末観測”」

子どもが泣き叫んだ。 「いやだ!! いやだ!!  世界を食べないで!!」

核の眼は子どもを見た。 「あなたの選択は強い。  だが選択は世界を揺らす。  揺らぎは危険」

少女は胸の光を握りしめた。 「揺らぎでもいい!!  危険でもいい!!  私たちは……選ぶ!!  この世界を……生かす!!」

核の眼が揺れた。

「……選ぶ……?」

少女は叫んだ。 「選ぶ!!  壊されても、食べられても、観測されても!!  私たちは選ぶ!!  この世界を生かすって!!」

シンゴが叫んだ。 「俺たちの世界だ!!  勝手に終わらせるな!!」

子どもが叫んだ。 「ぼく……生きたい!!  みんなと……生きたい!!」

核の眼が震えた。

世界が揺れた。

空が裂けた。

そして―― 核の眼が“閉じた”。

四章 核の沈黙

世界は静まり返った。 漆黒の空はそのままだったが、核の眼は閉じていた。

少女は膝をつき、胸の光を押さえた。 光は弱く、しかし確かに脈打っていた。

シンゴは肩で息をしながら言った。 「……終わったのか……?」

子どもは少女に抱きつきながら言った。 「こわかった……でも……生きてる……?」

少女は空を見上げた。 「終わってない。  核は……まだ“判断”してない」

漆黒の空の奥で、何かが動いた。

それは光でも影でもない。 ただ、世界の奥底から響く“次の脈動”。

少女は息を呑んだ。

「次は……核の“決断”が来る」

世界の終わりは、まだ始まったばかりだった。

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